いまは日本全国で名が知られた最上級の和牛ブランド・松阪牛は、三重県松阪市を中心にした地域の肥育農家によって支えられています。
平均として約三年間という長期肥育の期間を、惜しみなく手間ひまをかけて愛情込めて育てる苦労を、農家たちが背負っています。
伝統を守りつつ工夫を重ねる農家、そして新たな挑戦を志す農家、その努力の形はさまざまです。
毎年十一月には、肥育農家にとっての松阪牛の二大イベントという晴れの舞台が待っています。ひとつは、地元松阪で開催される「松阪肉牛共進会」、もうひとつは東京で開催される「松阪肉牛『枝肉』共進会」です。
どちらも、牛の育ち具合を競う名誉ある品評会ですが、松阪で開催される「共進会」は、牛の体形を競ういわゆる“美人コンテスト”であることに対し、東京の「枝肉共進会」は、食肉処理後の枝肉の状態での肉の品質を競うというところが異なります。審査の対象が、外見か中身という点で異なるわけです。
松阪牛の2大イベントとは?!
この松阪牛の二大イベントに照準をあわせて、肥育計画を立てている農家も少なくはありません。
「共進会」には毎年合計五十頭ほどが、「枝肉共進会」には三十五頭ほどが出品されて、専門家である審査員の厳しい目にさらされて最優秀賞が決められます。
このグランプリ獲得が、多くの肥育農家たちの夢でもあります。
これらのイベントに牛を出すのは、「我こそは」と思う自信を持った農家ばかりだそう。審査に続く競りによって、グランプリは名誉と同時に破格の収入をもたらします。
二つの共進会は、肥育農家の命運を握っているといっても過言ではないのです。