松阪市中町にある老舗「和田金」は、「松阪肉元祖」をうたっています。
各界中央の賓客も立ち寄るほどのこの店に掲げられている商売訓は、「よい肉しか売るな」という言葉です。
これは、明治四十一年に店を開いた初代が残した言葉だそうです。
直営牧場が和田金のバックボーンであり、肥育を追えた牛を年間ざっと千頭ほど送り出しており、松坂地区でも最大の規模を誇っています。しかし、これだけの牛の量を工面できても頭数には限りがあると和田金は考えています。
名古屋氏の松坂屋百貨店に唯一ある支店は、かき入れ時の連休の時期ごとに一時休業をはさむといいます。
なぜかというと、牧場の肥育頭数には限りがあるからとのこと。名古屋の支店で売れすぎてしまうと、本店で取り扱う肉がなくなってしまうから、という理由だそうです。同じ理由で、東京への出店も断ったといいます。
堂々たる店構えの松阪本店では、和服姿の従業員が丁重に客を招き入れます。
このお店の信念なのでしょか。尊敬に値します
食事を終えて帰る客を、後ろ姿が遠くに消えるまで見送るのもこのお店のスタイルです。
各業界のVIPも和田金に足を運び、高級車が横付けされることも珍しくはありません。
しかし、たとえ総理大臣であっても一般客との間に、出す肉の質や値段に違いはないといいます。
直営牧場の開設で先見の明を見せた、四代目の松田和祐社長は今でも毎月のように兵庫県へ出向いて牧場で育てるための子牛を吟味しているそうです。
これも、明治時代から続く商売訓の「よい肉」を求めてということです。