松坂肉の老舗、松阪市の「和田金」の前には、毎年暮れの大晦日の前日、まだ真っ暗な早朝から人が並び始めます。
お目当てはもちろん、正月用に食べる松坂肉。
列に並ぶ地元の男性は、「毎年ここに並んで肉を買って年を越し、新年を松坂肉のすき焼きで迎えるのが、我が家の伝統行事のようなもの」と話します。
またある人は、「正月の楽しみは松阪牛を食べること」と話し、地元の人だけでなく遠方からわざわざ長年続けて買いに来るという人もいるほどなのです。
十二月の厳しい寒さの中、列に並んだ人の間では松阪肉談義に花が咲くことも珍しくはありません。
100メートルほどの行列が出来た開店予定の一時間ほど前には、「これより先は細切れ肉、しぐれ煮の販売になります」と書かれたプラカードを持って店の従業員が登場し、列の後方からはため息がもれました。
和田金で取り扱う年間約1000頭のうち3-400頭が十二月だけでさばける。
松阪市内や津市など、松阪牛を扱うほかの店でも年末の売り場は高級肉を求めて人がごった返すといいます。
「正月くらいは贅沢に」「年に一度の楽しみ」など、松坂肉を買い求める人の思いはさまざまです。
しかし、美味しいお肉で特別な日を過ごしたいという思いは皆一様に変わりません。
この松坂牛の人気ぶりは、全国に誇るふるさとの味への市民への思いの表れともいえます。
松坂肉でのすき焼きは、地元・松阪の正月の食卓には欠かせない一品になっているようですね。