後継者不足、そして牛肉輸入の自由化による国産和牛産業の低迷…。
日本国内でのブランド和牛の肥育農家の多くが、いまも不安を抱えています。
最優秀賞を得た松阪牛ですら落札価格は年々低迷してきており、安値が続けば飼料代も工面できない農家が出てくるだろうと言われており、産地の置かれた状況はますます厳しいものとなっています。
但馬牛の産地として名高く、松阪牛のふるさとのひとつでもある兵庫県美方郡村岡町で、「秋までは田んぼと畑仕事、冬は牛の世話」という昔ながらのスタイルを続けているある繁殖農家に話を聞きました。
繁殖農家を取り巻く環境は非常に厳しく、牛のにおいや鳴き声、そして夏に牛に寄ってくる虫などに来る苦情。
牛が飼えなくなってしまった悲しい現状とは?
そんなものが気になり、家の近所では牛を飼えなくなってしまったと言います。
この農家のお宅では、自宅から500メートルほど離れた集落の外れで牛を飼っているそうです。
牛舎はとても清潔にされており、その手の込んだ世話が伺える。においも殆どなく牛たちも非常に静かであり、風が木々と建物をきしませる音のほうがよく聞こえてきます。
昔は、どこの農家も玄関脇に牛がいたものだそうです。
それが、時代の流れに沿って一頭減り、一軒減り、今ではこの集落で牛を飼っているところがほぼいないとのこと。
「売るために育てている牛だと分かってはいるが、毎日ずっと世話をしていれば情もわき、家族のようなものだ」と、彼らは語ります。「ほんの少し手を加えるだけで、牛は勝手に育つ」と語り、後継者不足に頭を抱えながらもまだまだ現役を貫く年配の繁殖農家は多いようです。