松阪牛を育てる農家の中で、若手と呼ばれる人はほんのごく少数です。
農家の多くが中高年であり、後継者に悩まされ展望がないまま、自分の代で肥育をやめてしまうという高齢の農家も少なくはありません。
せっかく培った松阪牛の肥育技術を、誰にも伝えることがないまま廃業していってしまいます。
これは、非常にもったいないお話ですよね。
松阪牛というブランド名が、「松阪」という小さな街の名前を全国に広め、それを支えてきたのが名も無き肥育農家たちです。
ですが、彼らの苦労や努力は、一般の人々にはほとんど知られることなく、商品である「松阪牛」という牛肉だけに皆、目を向けるのです。
これは、あらゆる産業において同じことが言えるかもしれません。
松阪市内はもちろん、周辺の町村にも松阪牛の歴史やそれを育てる農家・肥育技術や流通形態などが見聞きできる施設や展示はほとんどないのが現状です。
日本一の伝統を誇る、松阪牛の歴史や農家たちの地道な努力を広く伝えられる施設があれば、観光客へのアピールとなり、ひいては後継者が育つきっかけになるかもしれません。
農家の励みにもなるでしょう。
畜産を学ぶ生徒ですら、将来の仕事に選ばないというこの厳しい現実。農業が再び芽吹く日は、日本に訪れるのでしょうか。
世界に名の知られた松阪牛を育てる最前線に、未来を担う若者達が加わらないという現代の状況では「日本一」の銘柄牛の前途にも険しい道のりが待ち構えているのかもしれませんね。